病院・医療機関へのサイバー攻撃が増加しており、長期間の診療停止など甚大な被害が出る恐れがあります。本記事では具体的な被害事例や厚生労働省のガイドラインに基づく対策手順について詳しく解説します。
近年、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によって電子カルテシステムなどのデータが暗号化され、使用不能になる事例が多発しています。国内の病院においても、ランサムウェアの侵入によりPCが使用不能となり、新規患者の受け入れ停止を余儀なくされるなど、医療提供体制を脅かす被害が実際に多数報告されています。
サイバー攻撃の被害に遭うと、電子カルテが閲覧できなくなることで、数ヶ月にわたって外来や救急の受け入れが制限されたり、診療報酬の請求が停止したりする事態に陥ります。システムの復旧には多大な時間がかかるケースもあり、医療の提供だけでなく、病院の事業継続(BCP)に極めて深刻な影響を与えます。
厚生労働省が公表している「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)」では、システム管理者のみならず、病院の経営層に対してもサイバーセキュリティ対策の重要性が強く求められています。具体的には、外部からの接続をその都度評価し、厳密にアクセスを制御する「ゼロトラストネットワーク」の考え方に基づき、クラウド事業者等と責任を分担しながら適切に対応することが明記されています。
対策を進める際は、厚生労働省が提示する「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」を活用します。まず医療情報システムの安全管理責任者を設置し、ネットワーク機器の脆弱性管理状況を確認します。さらに、不正アクセスを防ぐためのパッチ適用や、インシデント発生時の連絡体制図の作成、サイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)の策定など、必要な手順を事業者と協力して点検します。
具体的な対策として、まずはパスワードルールの策定と適切な運用が必要です。管理者権限を持つユーザーには2要素認証を導入し、不正アクセスを防止します。また、電子カルテなどの機密情報へのアクセス権限を職種や業務に応じて限定するアクセス制御を実施することも重要です。さらに、外部からの不正な通信を遮断するためにファイアウォールを設置し、院内ネットワークへの異常なアクセスを監視する体制が求められます。
マルウェアや不正プログラムからシステムを保護するため、ウイルス対策ソフトを導入し、常に最新の状態にアップデートすることが不可欠です。また、ランサムウェアによるデータ暗号化の被害に備え、定期的にデータをバックアップし、それらをネットワークから切り離されたオフライン環境に保管しておくことが、迅速な復旧と被害の最小化に直結します。
システム面の対策だけでなく、全職員に対する定期的なセキュリティ教育を実施し、フィッシング詐欺などの脅威に対する意識を向上させることも欠かせません。加えて、昨今は高性能AIの悪用によりサイバー攻撃が高速化しているため、使用している機器やソフトウェアの脆弱性が発見された場合は、速やかに修正プログラム(セキュリティパッチ)を適用できる迅速な管理体制の構築が不可欠です。
病院のサイバーセキュリティ対策は、単なるコストではなく、将来の事業継続と患者の命を守るために必要な投資と位置付けるべきです。経営層のリーダーシップの下、厚生労働省のガイドラインに沿った具体的な対策を行うことが、医療の安全確保と社会からの信頼維持につながります。
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