M&Aと親族承継の違い
病院やクリニックの院長・理事長にとって、事業承継は重要な課題です。特に後継者がいない場合、親族内承継とM&A(事業譲渡)のどちらを選択すべきか迷うこともあるでしょう。本ページでは、それぞれの違いやメリット・デメリットを解説します。
親族承継とM&Aの基本的な違い
親族内承継とは?
親族内承継とは、経営者の子供や兄弟などの親族に事業を引き継ぐ方法です。長年の業務経験を活かしながら、企業理念や文化をスムーズに継承できる点が特徴です。
M&A(事業譲渡)とは?
M&Aとは、第三者に事業を売却し、経営権を引き継ぐ方法です。親族や社内に適任者がいない場合に選ばれることが多く、売却によってまとまった資金を得られる可能性があります。
親族承継のメリットとデメリット
メリット
- 企業理念や文化を引き継ぎやすい:経営者が親族に直接ノウハウを伝えられるため、スムーズな事業承継が可能です。
- 取引先や従業員の理解を得やすい:長年の関係性があるため、外部の第三者に引き継ぐよりもスムーズに承認されることが多いです。
- 税制優遇の活用が可能:事業承継税制により、一定の条件を満たせば相続税・贈与税の負担を軽減できます。
- 迅速な意思決定ができる:親族内で経営を行うため、意思決定のスピードが速くなります。
デメリット
- 後継者がいない可能性がある:子供や親族が必ずしも医療経営を引き継げるとは限りません。
- 債務や個人保証の引き継ぎが必要:経営者が負っていた債務や保証を後継者が引き継ぐリスクがあります。
- 親族間のトラブルの可能性:事業資産や株式の承継を巡り、親族間で意見が対立することもあります。
M&Aのメリットとデメリット
メリット
- 後継者が不要:親族や従業員に後継者がいなくても、外部の第三者に売却できます。
- 相続税の負担がない:親族内承継のように相続税・贈与税を考慮する必要がありません。
- 資金を得られる:事業売却によりまとまった資金を得ることができ、老後の生活資金に充てることも可能です。
- 従業員の雇用や取引先との関係を維持しやすい:買収先企業によっては、従業員の雇用や取引関係を継続できる場合があります。
デメリット
- 買い手を見つける必要がある:適切な買い手が見つかるまで時間がかかる場合があります。
- 交渉が必要:価格や条件の交渉が必要となり、専門家のサポートが求められます。
- 売却後の関与が限定される可能性:売却後は経営に関与できなくなる場合もあるため、医療経営を続けたい場合は選択肢が限られます。
どちらを選ぶべきか?
親族承継とM&Aの選択は、病院・クリニックの状況によって異なります。
- 親族承継:親族に後継者がいて、事業を長く継続したい
- M&A:後継者がいない、または早期に資金化したい
親族承継とM&Aの違いを理解して適切な選択を
親族内承継とM&Aのどちらを選ぶかは、病院・クリニックの状況によって異なります。親族内承継は企業理念の継承や関係者の理解を得やすい一方で、後継者の確保や相続税の問題があります。一方、M&Aは資金を得やすく、後継者不要のメリットがありますが、交渉や買い手の選定が必要です。
事業承継を成功させるためには自院の状況をしっかりと分析し、適切な方法を選ぶことが重要です。