クリニックを閉院する際には、患者対応、行政手続き、スタッフの雇用終了手続きなど、多岐にわたる対応が求められます。加えて、さまざまな届出を期限内に提出する必要があります。本記事では、必要な手続きや提出期限を網羅的に解説し、閉院をスムーズに進めるためのポイントを詳しくご紹介します。
閉院手続きは時間をかけて計画的に進める必要があります。以下に、おすすめのスケジュールを示します。
クリニック閉院時には、行政機関や関係機関への届出が必須です。以下は、提出先と期限を一覧化したものです。
届出の名称 | 提出先 | 期限 |
---|---|---|
診療所廃止届 | 保健所 | 閉院から10日以内 |
診療所開設者死亡届 | 保健所 | 院長が死亡した場合、死亡日から10日以内 |
診療用エックス線装置廃止届 | 保健所 | 診療所廃止届と同時に提出 |
麻薬使用者業務廃止届 | 保健所 | 閉院から15日以内 |
保険医療機関廃止届 | 地方厚生局 | 閉院後速やかに提出 |
生活保護法指定医療機関廃止届 | 地方厚生局 | 閉院から10日以内 |
労災保険適用廃止 | 労働基準監督署 | 閉院から50日以内 |
届出の名称 | 提出先 | 期限 |
---|---|---|
個人事業の開業届出・廃業届出等 | 税務署、都道府県税事務所、市区町村 | 閉院から1か月以内 |
事業廃止届出書 | 税務署 | 閉院後速やかに提出 |
給与支払事務所等の廃止届出書 | 税務署 | 閉院から1か月以内 |
所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 税務署 | 翌年の3月15日までに提出 |
届出の名称 | 提出先 | 期限および添付書類 |
---|---|---|
健康保険・労働厚生保険適用事務所全喪届 | 年金事務所 | 閉院から5日以内。法人の場合、登記謄本が必要。 |
被保険者資格喪失届 | 年金事務所 | 閉院から5日以内。健康保険被保険者証を添付。 |
雇用保険適用事業者廃止届 | ハローワーク | 閉院から10日以内。登記簿謄本などの提出が必要。 |
雇用保険被保険者資格喪失届 | ハローワーク | 閉院から10日以内。離職証明書の添付が必要。 |
クリニックを閉院する際には、通院中の患者さんや入院患者さんに、閉院日を事前に知らせる必要があります。特に、継続的な診療が必要な患者さんには、他の医療機関への引き継ぎを行いましょう。引き継ぎ先が決まっている場合には、紹介状を準備するなど、患者さんがスムーズに転院できるよう配慮が求められます。また、未収の医療費がある場合は、閉院前に回収を完了するよう努めてください。
スタッフに対しても、閉院について早めに知らせることが大切です。閉院に伴い解雇する場合は、解雇の理由や時期を十分に説明し、納得を得られるよう配慮しましょう。スタッフの退職金が規定されている場合は、その準備も進めます。また、退職に伴う社会保険の手続きも忘れずに行いましょう。
カルテは医師法第24条に基づき、過去5年分の保管が義務付けられています。紙カルテの場合、患者数によってはかなりの保管スペースが必要となるため、適切な保管場所を確保してください。一方、電子カルテの場合はスペース不要ですが、クラウド型システムでは契約終了後にデータが消失する可能性があるため、PDF形式などで保存しておくことを推奨します。
保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条に基づき、撮影後のレントゲンフィルムやデータは、診療行為が終了してから3年間の保管が義務付けられています。
エックス線装置などを使用していた場合は、線量計による測定結果の記録を5年間保管する必要があります。測定は半年以内ごとに1回以上行われていることが求められます。
向精神薬を使用していた場合、廃棄の記録を2年間保管することが義務付けられています。記録内容には、薬品名や数量、処分日、処分先の詳細が含まれます。廃棄時は確実に処理するため、酸・アルカリ分解や焼却など適切な方法を使用してください。
スタッフに閉院を伝える際には、解雇の必要性やスケジュールについて十分に説明し、転職準備ができるよう配慮しましょう。労働組合がある場合は事前協議を行い、退職金や最終給与の準備も進めます。
患者さんには、診療終了日を明確に伝えるとともに、引き継ぎ先の医療機関を紹介する必要があります。紹介状作成などには一定の時間がかかるため、早めの準備が重要です。また、患者さんの未収医療費がある場合は、閉院前に確認して回収を進めましょう。
クリニックが賃貸物件の場合、契約内容に基づき原状回復が求められる場合があります。スケルトン返却が必要な場合は、解体費用などを事前に確認し、準備を進めてください。
リース契約が残っている医療機器がある場合、リース代金の精算を行います。また、ローンが残っている場合は、必要に応じて売却や返済の手続きを進めましょう。
クリニック閉院には、関係者対応や多岐にわたる届出が必要です。本記事で紹介した内容を参考に、計画的に準備を進めましょう。専門家を活用し、手続き漏れを防ぐことでスムーズな閉院が実現します。