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医療M&Aで発生する税金

医療M&Aでは、法人・個人・買い手のそれぞれに税金が発生します。本記事では税金の仕組みと、スキームごとの違いを整理し、「誰に・いつ・どの税金がかかるのか」をまとめました。

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医療M&Aで発生する
主な税金の種類

法人側にかかる税金

法人税・地方税

事業譲渡によって発生する譲渡益には、法人税や地方税(事業税など)が課税されます。税率は法人の規模や課税所得などによって異なりますが、一定の税負担が発生するため、売却代金がそのまま手元に残るわけではありません。

なお、法人に過去の繰越欠損金がある場合は、今回の譲渡益と損益通算することで、課税対象となる所得を減らし税負担を軽減できるケースがあります(控除できる割合には要件・限度があります)。

消費税

事業譲渡を選択した場合、譲渡対象となる資産のうち課税資産に対して消費税が課されます。医療機器・建物・医薬品在庫に加え、無形資産である「のれん(営業権)」も課税対象です。

一方、土地や債権などの資産は非課税です。医療M&Aでは、のれんなど課税資産の比率が高くなりやすく、消費税負担が相対的に大きくなるケースが少なくありません。また、消費税の納税義務者は売り手法人ですが、実務上は売却価格に消費税額を加えて買い手が支払うため、最終的な決済金額(総額)が増える点に留意が必要です。

院長(個人)の場合にかかる
税金

所得税・住民税

院長個人が受け取る対価は、内容によって所得区分が異なり、適用される税率や計算方法も変わります。

まず、「役員退職金」として受け取る部分は退職所得として扱われます。退職所得控除が適用され、課税対象額が大きく圧縮されるため、他の所得と比べて税負担が抑えられる仕組みです。

一方、出資持分の払戻しで生じる「みなし配当」や、継続して受け取る役員報酬は、給与所得などと合算される「総合課税」の対象です。総合課税は所得に応じて税率が上がるため、所得税と住民税を合わせて最大約55%※1が適用される場合もあります。

※1参照元:財務省「個人所得課税の税率等の推移(イメージ図)」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/b02.htm#a02)

譲渡所得税

持分あり医療法人の出資持分を譲渡して生じた譲渡益には、所得税15.315%と住民税5%が課税され、合計20.315%の税負担※2となります。

給与所得など他の所得とは合算せずに分離して税額を計算する「申告分離課税」が適用されるため、金額が大きくても税率が変わらないのが特徴です。

※2参照元:医療継承サポート(https://shoukei.mplat.jp/news/column-0024/)

買い手側にかかる税金

M&Aの手法によっては、買収対価とは別に、不動産や医療施設の権利移転に伴う納税義務が買い手側に生じます。具体的には、不動産取得時にかかる登録免許税や不動産取得税、事業譲渡で発生する消費税などが該当。

買い手は税金を含めた総投資額で採算を考えるため、税負担の増加は買収提示額の減額に直結しかねません。手元に残る資金を最大化するには、買い手側のコストも考慮した戦略的なスキーム選定が不可欠です。

スキーム(譲渡形態)による
税金の違い

出資持分譲渡

売り手の手取り額を多く残せる可能性が高い手法です。まず、売り手の売却益に対する税金は、給与所得等(最大約55%)と異なり約20%※3で済みます。

さらに、買い手側も「消費税」や「不動産取得税」がかかりません。その削減分は買収価格に上乗せされやすく、結果として受取額の増加につながる傾向があります。

※3参照元:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm)

事業譲渡

資産やのれん(営業権)を特定して売却するため、原則として法人税や消費税が発生します。一見税負担が重く見えますが、法人に過去の「繰越欠損金(赤字)」がある場合は、売却益と相殺して法人税を大幅に圧縮、あるいはゼロにできる点が最大のメリットです。赤字が累積している医療法人の場合、手元資金を残せる可能性があります。

合併・分割

組織再編税制の「適格要件」を満たすことで、資産を時価ではなく簿価(帳簿上の価格)のまま承継し、課税を将来に先送りできる点が大きなメリットです。

計算上は「譲渡益」が出ない形になるため、金銭のやり取りを伴わないグループ内再編や、資金負担を抑えた統合に適しています。ただし、要件を少しでも外れると時価評価による多額の課税が発生するため、専門家による緻密な設計が欠かせません。

自院に適したスキームと
パートナーを見極める

ここまで解説した通り、選択するスキームによって税負担は大きく変動します。しかし、実際にどの手法を選べば手残り金額を最大化できるかは、個々の病院の規模や財務状況、買い手側の意向によっても異なるため、高度な専門判断が求められます。

失敗のないM&Aを実現するには、早い段階で実績豊富な専門家に相談し、詳細なシミュレーションを行うことが重要です。当メディアでは、売却したい病院の規模別におすすめのM&A仲介会社を厳選して紹介しています。自院に適したパートナー選びの参考にしてください。

医療法人特有の税務上のポイント

出資持分の有無

「持分あり」なら株式同様に売却益(分離課税)を得られますが、「持分なし」の場合は出資者に財産権がなく、売却代金を直接個人で受け取れません。買収対価を「役員退職金」として支払う形にするなど、給与課税を活用した別の資金還流スキームを設計する必要があります。

退職金の支給タイミング

M&Aの対価を「役員退職金」にすると大幅な節税が可能ですが、金額が「功績倍率」などの適正基準を超えると、税務調査で損金不算入(経費として認められない)となるリスクがあります。

また、法人の経費にできる年度は「支給額の決定日」等で決まるため、決算対策と連動させた緻密なタイミング調整が不可欠です。

含み益・含み損の取り扱い

設立から長く土地を保有する医療法人は、購入時の価格(帳簿価格)と現在の時価との差(含み益)が大きくなっているケースが多々あります。この状態で事業譲渡を行うと、土地の売却益に対して巨額の法人税が発生し、想定以上に手元資金が目減りするリスクがあります。

そのため、表面的な売却価格だけで判断せず、土地の含み益がどれくらいあるか、逆に建物や設備の含み損で相殺が可能かなど、詳細な「資産査定」を行った上で、税引後の最終手取額をシミュレーションすることが重要です。