病院・クリニックの売却を検討する院長や理事長にとって、M&A(企業の合併・買収)と資本業務提携は重要な選択肢です。引退や事業の整理を目的とした売却を考える際、それぞれの違いやメリット・デメリットを理解することが必要です。本ページでは、M&Aと資本業務提携の違いを解説し、それぞれの特徴について詳しく紹介します。
M&Aと資本業務提携の大きな違いは「支配権(経営権)の移動の有無」です。
M&Aでは企業の所有権が変わるため、大きな経営改革が可能です。一方、資本業務提携は一定の独立性を維持しつつ、提携による相乗効果を狙う手法となります。
M&Aの大きなメリットは、経営権の移動による経営の一本化です。事業承継がスムーズに進み、新たな経営者の指導によって企業価値の向上が期待できます。また、クリニックや病院を売却することで即時的な資金調達が可能となり、借入金の返済や新たな投資に活用できます。さらに、大手医療グループに買収されることで、新しい設備やノウハウの活用が可能となり、診療科目の拡充や経営効率化にもつながります。
一方で、M&Aにはデメリットもあります。経営権が移動するため、買収側の意向に従う必要があり、これまでの経営方針が変更される可能性があります。また、クリニックの方針が変わることで、従業員の待遇や患者への対応に影響を及ぼすことがあります。さらに、契約交渉や手続きが煩雑で、弁護士や会計士のサポートが必要となるため、手続きの負担が大きい点もデメリットとして挙げられます。
資本業務提携のメリットとしては、企業の独立性を維持できる点が挙げられます。経営権を譲渡しないため、これまでの経営方針を継続でき、柔軟な経営が可能です。また、資本提携による資金調達を通じて、新規事業の展開や医療機器の導入が容易になります。さらに、販売や技術、研究開発の面で相乗効果が期待でき、診療所同士の連携強化や医療機器メーカーとの提携によって競争力の向上につながります。
しかし、資本業務提携にもデメリットがあります。資本関係が生じることで、提携先企業からの影響を受ける可能性があり、経営の自由度がある程度制限されることがあります。また、資本提携を解消する際には株式の買戻しが必要になる場合があり、手続きが煩雑になることもあります。さらに、M&Aのような即時的な資金調達は難しく、資本業務提携では資金が段階的に供給されることが多いため、短期的な資金ニーズには対応しにくい点も注意が必要です。
病院・クリニックの売却を考える際には、以下の要素を基に判断するとよいでしょう。
M&Aは迅速な事業承継や資金調達に適していますが、経営権を手放す必要があります。一方、資本業務提携は独立性を保ちつつ支援を受ける方法ですが、経営の自由度が一部制限されることもあります。
病院・クリニックの売却を検討する際、M&Aと資本業務提携はそれぞれ異なるメリット・デメリットを持ちます。事業承継の目的や経営方針に応じて、適切な選択肢を選ぶことが重要です。売却や提携の検討時には、専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断することをおすすめします。