病院の売却で注目される低廉譲渡とは?
病院やクリニックの経営を引き継ぐ医業承継(医療版M&A)において、「低廉譲渡」という手法が注目されるケースがあります。
ここでは、低廉譲渡がどのような選択肢となるのか、その注意点を簡潔に解説します。
低廉譲渡とは?
低廉譲渡とは、時価よりも低い金額で資産を売却することを指します。不動産や出資持分の売買で利用されることが多く、医療法人の病院・クリニックの売却時にも検討される手法です。
一般的なM&Aと違い、譲渡価格を下げることで買手が見つかりやすくなりますが、税務上は「みなし譲渡」とされ、差額部分に課税が及ぶ場合があるため注意が必要です。
病院・クリニックにおける低廉譲渡が注目される理由
医療法人では、後継者の不在や資金繰りの問題から、スムーズな承継が急務となることがあります。医療体制を維持するために譲渡価格を抑え、地域医療を守る選択をする事例も少なくありません。
低廉譲渡が検討される主なケース
- 経営難や後継者不在による事業承継問題
新たな出資者や個人医師にスムーズに引き継ぎたい場合
- 資本力のない第三者への承継が必要な場合
譲渡価格を低く設定し、買手の資金調達を容易にする
- 地域医療の存続を優先するケース
採算よりも医療提供体制の維持を重視
- グループ病院内での統合や事業再編
低廉譲渡で組織再編を進めて運営効率を高める
低廉譲渡のメリット・デメリット
メリット
- 地域医療を維持しやすい
- 買手が見つかりやすく、承継がスムーズ
- スタッフの雇用確保につながる
デメリット
- 税務上の適正評価が難しく、不正とみなされるリスク
- 医療法・法人税法への抵触リスク
- 譲渡益が小さく、現オーナーへの利益が残りにくい
低廉譲渡と法的リスク・注意点
- 適正価格の算定:出資持分や土地など、時価との大きな乖離はみなし譲渡課税の対象に。
- 医療法人制度との関連:出資持分の譲渡と退職金受け取りを組み合わせるなど、税制への配慮が重要。
- 第三者への信頼性確認:財務状況や運営方針を事前に把握し、コンプライアンス面でも問題ないか確認する。
低廉譲渡を実行する流れ・手続き
- 事前準備
売却先の候補調査や医療法人内での合意形成。
- アドバイザーへの相談
M&A仲介や税理士、弁護士などのサポートを活用。
- 契約交渉と最終契約書作成
価格設定と従業員の雇用条件などを明確化し、税務リスクを回避する。
低廉譲渡を検討する際のポイントまとめ
- 専門家との連携が不可欠:法律・税務・事業計画の観点で総合的にチェック。
- 地域医療・患者の継続性を最優先に:従業員や取引先との信頼関係を維持する。
- 譲渡後の運営計画やビジョンの共有:事前に買手側の経営方針を確認し、トラブルを防ぐ。
まとめ
低廉譲渡は譲渡価格を抑えやすく、経営危機や後継者不在などの課題を解消する有効な手段です。
ただし、不当に安い価格で取引すると税務リスクが高まるため、適正価格の算定や専門家への相談は欠かせません。
地域医療と法人の将来を見据え、法令遵守を前提に慎重に進めることが大切です。