後継者不足や経営環境の変化によって、精神科クリニックの売却は増加傾向です。特に地方では、競合が少ないエリアで高収益を上げるクリニックが注目を集めています。地方の精神科クリニックは地域密着型のビジネスモデルや安定した患者基盤を持つことが多く、買収側にとっても魅力的な投資対象です。また、売却を検討する院長の多くは高齢化や事業承継の課題に直面しており、M&Aを通じて事業の存続を図る傾向が強まっています。
精神科クリニックが売却を検討する理由は大きく、後継者不在と経営負担の軽減、そして経営環境の変化の3つです。後継者不在の問題は、院長の高齢化や子どもが医療とは異なる道を選択することで深刻化しています。クリニックの経営は、人材確保の困難さや管理業務の煩雑さが負担になることも少なくありません。経営負担を軽減して医療に専念したい医師にとって、売却は有力な選択肢のひとつです。診療報酬改定や地域医療構想による影響、さらには競合の増加や患者ニーズの多様化により、経営環境が変化しています。従来のビジネスモデルの見直しが迫られている中、経営戦略の転換を図るため売却を検討するケースがあります。
売却の一般的な流れは、次の6ステップです。
まずは、事前準備を行います。クリニックの財務諸表（貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書）を整理し、経営状況を把握しましょう。資産状況や負債の確認、労務関連資料の分析も行い、詳細なデータをまとめておくことも重要です。準備を行うことで、売却価格の算定や買い手への情報提供がスムーズに進められます。
次に、M&A仲介会社や弁護士など専門家へ相談してください。クリニック業界での実績がある仲介会社を選び、アドバイザリー契約を結ぶことで、売却価格の計算や後継者探しなどの支援を受けられます。また、弁護士に相談することで、法的な観点からの助言を得ることができます。
買い手選定のステップでは、条件に合う候補をできるだけ多く洗い出し、最適な相手を絞り込みます。候補が決まれば、経営者同士で面談し本格的な交渉に入るステップです。この段階では、従業員や取引先には非公開とし、意向表明書の提出を通じて買収の意思を確認します。
買い手がデューデリジェンスという調査を実施します。クリニックの財務状況や資産価値、負債、税務リスクなどの調査です。デューデリジェンスの結果を踏まえて最終条件交渉を行います。合意に達したら、契約です。事業譲渡契約書や株式譲渡契約書などの最終契約書を作成。双方で署名・捺印します。
最後に引き継ぎです。業務内容やスタッフの管理方法、患者情報などを新しい経営者に詳細に伝えます。患者への説明や挨拶も重要で、スムーズな移行のために一定期間、前院長が顧問として残ることもあります。また、スタッフとの面談を行い、新体制への不安を軽減することも大切です。
中部エリアで50年以上続く精神科病院（売上約6億円）が、後継者不在と理事長の業務負担軽減のため、医療機関経営支援に強みを持つ法人に譲渡されました。買い手企業は、規模とエリアの拡大を目的としていました。
この病院は地域に根差した医療機関でしたが、理事長は経営を専門家に任せるべきと考え、M&Aを決断しました。一方、買い手は、医療機関や福祉施設に対する経営支援に強みを持つ法人で、規模とエリアの拡大を目指していました。精神科病院への経営支援実績があり、理事長も安心して任せられると判断したことが、M&A成立の決め手となりました。
病院経営は厳しさを増していますが、企業経営の手法を取り入れて業績を改善し、業績不振の病院を買収・再生させる事例も出てきています。
精神科クリニックの売却成功事例に関する具体的な情報がひとつしか見つかりませんでした。参考までに、M&A案件を2つ紹介します。
福岡県の売上4000万円規模の精神科クリニックが後継者不在を理由に、事業譲渡のM&Aの募集をかけています。駅直結のビルテナントに入っている個人医院という好条件で、院内が綺麗に整備されているため、低予算開業が可能です。希望価格は4500万円となっています。（2025年3月調査時点の情報）
大阪市の売上2200万円規模の精神科クリニックのM&A案件です。後継者不在が理由とされています。最寄り駅から徒歩3分以内の好立地です。希望金額は1200万円。投資額は2000万円以内の低予算開業が可能な案件となっています。診療規模を縮小しているため、伸びしろがあります。
売却側のメリットのひとつは、経営の負担軽減です。精神科クリニックの経営は、医療の知識とは異なる視点が求められます。良い医師が必ずしも経営に長けているわけではありません。売却すれば、経営は専門家に任せて医療に専念できるようになります。
資産確保も売却で得られるメリットのひとつです。売却により、クリニックの価値に応じた対価を受け取ることができます。この資金は、引退後の生活資金や新たな事業への投資に充てることが可能です。
また、売却によってクリニックを存続させることができるため、地域医療の継続性を保つことができ、スタッフの雇用も守られます。
買収側の大きなメリットは、既存の患者基盤を引き継ぐことです。新規開業に比べて安定した経営基盤を即座に獲得できます。地域に根差したクリニックの場合、長年培われた信頼関係や患者データを活用し、継続的な医療サービスを提供可能です。
また、精神科クリニックを買収するメリットとしては、診療科目の拡充が挙げられます。精神科と他の診療科を組み合わせることで、より包括的な医療サービスの提供が可能です。例えば、内科や心療内科との連携により、身体症状と精神症状を総合的に診療できるようになります。患者の利便性が向上し、医療の質も高められます。
精神科クリニックの売却時は、「価格」「離職」「契約」の3大リスクに注意してください。
まずは、価格交渉です。希望価格と市場価格にギャップが生じることがあります。適切な価格設定が重要です。
売却後の体制変化によって、スタッフが離職するリスクもあります。不安を感じさせないよう、円滑な引き継ぎと丁寧な説明が求められます。契約上のトラブルにも注意が必要です。売却条件や引き継ぎ内容の不備によるトラブルを避けるためには、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることがポイントとなります。
精神科クリニックの売却を成功させるために重要なステップが、売却準備です。事前に財務状況やスタッフの雇用方針、売却の目的を整理しておきましょう。
財務状況の把握では、税理士や会計士に相談し、財務諸表（貸借対照表、損益計算書など）や資産・負債の状況を確認します。クリニックの経営状態が把握でき、売却価格の目安が分かるため、価格交渉がスムーズになります。
次に、労務関連資料の整備を行います。スタッフの雇用契約や勤務条件を整理し、買い手が安心して引き継げる環境を整えます。診療実績や患者データなど、クリニックの価値を示す資料も準備します。買い手にとって重要な判断材料です。
精神科クリニックの売却先選定では、事業の継続性と従業員の待遇を重視することが重要です。まず、条件に合う候補をできるだけ多く洗い出し、最適な相手を絞り込みます。選定の際は、買い手の経営方針や地域医療への貢献度を考慮しましょう。
経営者同士の面談を通じて、クリニックの理念や患者ケアの方針が継承されるか確認します。従業員の雇用継続や待遇維持についても慎重に協議することが大切です。交渉の初期段階では、従業員や取引先には非公開とし、不安を招かないよう配慮します。買い手側から意向表明書を受け取ることで、本格的な交渉に進むことができます。
患者への影響を最小限に抑えるためには、売却契約後の引き継ぎとアフターサポートが極めて重要です。詳細な業務マニュアルを作成し、日々の診療フロー、患者対応、医療記録の管理方法などを明確に文書化します。一定期間、前院長が新経営陣と共に診療を行う方法も有効です。引き継ぎ期間に、患者に対して丁寧な説明を行い、不安を軽減します。
スタッフへの引き継ぎも重要です。新経営陣との面談の機会を設け、方針や待遇について明確に伝えます。
精神科クリニックは、後継者不足や経営環境の変化による売却事例が増加傾向にあります。事前準備と適切な交渉が売却成功のポイントです。事前準備、専門家への相談、買い手選定、デューデリジェンス、契約締結、引き継ぎのステップを慎重に経て、スムーズな売却を目指しましょう。売却時のリスクとして価格交渉の難航、スタッフの離職、契約上のトラブルがあります。これらを回避するには、専門家のサポートを受けながら慎重に進めることが重要です。
引用元：ダブルブリッジアドバイザリー公式サイト
引用元：メディカルプラス公式HP
引用元：メディカルプラス公式HP