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デイサービス業界の売却事例・M&A傾向

デイサービスM&Aの成功事例

後継者問題をきっかけにデイサービス事業を売却

デイサービス事業を運営していたA社。オーナーには後継者として予定していたご子息がいたものの、ご子息自身、後継者となることの決断ができない状況でした。

そのような中、奥様が病気で他界したことをきっかけに、オーナーは従業員と利用者を守るため事業の売却を決断。専門機関に相談し、売却先の候補を提示してもらいました。

オーナーは複数の売却先候補と面談を実施。面談を行ったある事業者のトップの理念や考え方に共感し、事業譲渡することとしました。

利用者にも従業員にも迷惑をかけることなく事業継続にいたったことに、オーナーは安心した様子でした。

※参照:経営承継支援(https://jms-support.jp/column/2020%E5%B9%B4%E9%80%9A%E6%89%80%E4%BB%8B%E8%AD%B7%EF%BC%88%E3%83%87%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%EF%BC%89%E6%A5%AD%E7%95%8C%E3%81%AE%E6%9C%80%E6%96%B0ma%E5%8B%95%E5%90%91/)

スピード感を重視したデイサービス事業の売却

年商規模5000万円の1日型デイサービス事業を営んでいたB社。事業所の閉鎖が決定したものの、従業員と利用者の現状を維持するための方策を検討し、M&Aによる売却も選択肢としました。

その後、代表はM&A仲介会社へ相談し、スピード重視での売却を要望。募集活動を初めてすぐに応募してきた企業と面談し、要望通り迅速な売却が成立しました。

M&A後の従業員説明会には、B社代表はもちろんのこと、買収後も不安なく働ける環境であることを伝えるため、買収側の代表も出席。当初は10分の予定だった説明を60分まで延長し、誠意を持って従業員への説明を行ったとのことです。

※参照:介護M&A支援センター(https://kaigo-ma.com/example/pickup?id=5)

自分が倒れたときの利用者や従業員への影響を考えて事業売却

2006年11月に創業したデイサービス事業者のC社。代表の真摯な人柄もあり、利用者からも従業員からも慕われるデイサービスとして順調に成長していきました。

一方で代表自身は月曜日から土曜日までを働き続け、利用者の送迎も担当する満身創痍の状態。万が一、自分が倒れたときの利用者や従業員への影響を考え、事業の売却を決断しました。

M&A仲介会社に相談し、約1か月で2社のトップと面談。代表の若さや覇気に惹かれたことを理由に、最終的にはD社への売却を決めました。

売却後、D社はC社の元代表をデイサービスのドライバーとして雇用。引き続き介護サービスに関われることに喜びを感じているようです。

株式譲渡後も従業員として事業に従事

高齢による心身の疲労から、利用者と従業員のためにデイサービスの経営からリタイアを決意。複数のM&A仲介会社に相談する中で、介護事業への深い知識と迅速な対応に魅力を感じた会社に売却を依頼しました。

建築基準法の問題から株式譲渡を決断。譲渡後、譲渡先の社長が丁寧な説明を重ね、地域に愛されるデイサービスを安定的に運営しています。

元経営者はドライバーとして雇用され、事業に関わり続けています。介護事業への理解度が高い仲介会社を選んだことが成功につながりました。

※参照:介護M&A支援センター(https://kaigo-ma.com/example/voice/?id=1)

ポジティブな面を従業員に説明

コロナ禍での人材不足を機にM&Aを決断。会社をより強くし、従業員に安心して働いてもらうため、理念が合致した企業とのM&Aを選択しました。決め手は、コロナ禍で職員が感染した際に本社からの手厚いサポートがあったことでした。

事業譲渡から法人譲渡への切り替えや行政手続きなど課題もありましたが、スムーズに進めることができました。従業員にはM&Aのポジティブな面を伝え、理解を得ました。

元経営者は、今後、認知症ケアの専門家や防災士として地域に貢献していく意向です。

※参照:介護M&A支援センター(https://kaigo-ma.com/example/voice/?id=8)

日本の介護難民問題に対応するためM&Aを実行

障害福祉分野で基盤を築いてきたことから、日本の超高齢化に伴い高齢者介護の需要が増加する一方、事業者減少により「介護難民」問題が懸念されている課題に対応する方法を検討しました。新規事業立ち上げでは時間と労力が必要なため、M&Aを通じて人材不足やノウハウの課題を補完し合い、事業継続を図ることを選択しました。

今回M&Aに成功した企業では長期勤務者が多かったことから、従業員の不安解消に向けて透明な説明を重視し、相互理解を深めました。

※参照:介護M&A支援センター(https://kaigo-ma.com/example/voice?id=9)

デイサービス業界におけるM&Aの最新動向と背景

デイサービスの現状と市場規模(2026年最新動向)

厚生労働省のデータによると、日本の介護費用総額は増加傾向にあり、令和5年度(2023年度)には11兆5,000億円を突破しました。しかし一方で、通所介護(デイサービス)単体の費用額累計は、令和4年度時点で約1兆2,768億円となり、前年比で微減を記録しています。

これは、高齢者人口が増加しているにも関わらず、事業所の淘汰が進んでいる実態を表しています。受給者1人あたりの費用額は上昇しているため、「質の高いサービスを提供して加算を取れる事業所」と「そうでない事業所」の収益格差が拡大しており、M&Aによる業界再編が加速しています。

※参照:厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/23/index.html

2024年度(令和6年度)介護報酬改定がM&Aに与えた影響

2026年現在のデイサービス経営において、最も大きな影響を与え続けているのが2024年度の介護報酬改定です。この改定では、介護職員の処遇改善に重きが置かれた一方で、「業務継続計画(BCP)の未策定」や「高齢者虐待防止措置の未実施」に対する減算(基本報酬の1%減)が厳格化されました。

これにより、コンプライアンス管理や事務作業の負担に耐えきれなくなった中小規模のデイサービスが、体制の整った大手グループへの売却(傘下入り)を選択するケースが急増しています。

デイサービス事業のM&Aが増加する背景

介護業界の慢性的な人手不足に加え、昨今の物価高騰(光熱費や食材費の高騰)を利用料金に転嫁できない介護保険制度の仕組みが、デイサービスの利益を圧迫しています。

また、経営者の高齢化による後継者不足も深刻化しており、従業員の雇用と地域の介護インフラを守るための有効な手段として、事業を第三者へ引き継ぐM&Aが積極的に活用されています。

デイサービスの種類と規模によるM&A市場での評価の違い

デイサービス(通所介護)と一括りに表現しても、施設の規模や指定要件によって、M&A市場における買い手企業の評価基準は異なります。自社の施設区分が市場でどのように見られるかを把握しておくことが、事業承継の第一歩となります。

通常規模型・大規模型デイサービスの傾向

月間利用者の延べ数が300人を超える「通常規模型」や、900人を超える「大規模型」のデイサービスは、人材配置や施設運営においてスケールメリットを活かしやすいため、買い手企業からの関心が集まりやすい傾向にあります。人口密集エリアで安定した稼働率を維持している施設は、譲受後の収益予測が立てやすく、企業価値が相対的に高く評価されやすいと言えます。

地域密着型(小規模)および単独拠点のM&A事情

利用定員が18人以下の「地域密着型通所介護」や、単一拠点のみを運営している事業所の場合、大手企業からは「自社で新規出店した方が早い」と判断されるケースがあり、単体での高額譲渡のハードルは高くなる傾向があります。
しかし、近隣の医療機関からの異業種参入需要や、同一エリアでドミナント戦略を進める同業他社による買収など、ターゲットを絞り込むことで事業承継の可能性を見出すことは十分に可能です。

赤字経営・単独拠点からでも事業承継を目指すための選択肢

デイサービス業界では、人手不足や初期投資の返済負担により、赤字や債務超過の状態のまま事業の引き継ぎを模索するケースも数多く存在します。経営が苦しい状況であっても、適切なスキームを用いることで事業を存続させる道は残されています。

金融債務の引き継ぎを目的とした「0円譲渡」の実態

事業の収益性が低く、営業権(のれん代)としての価格が算定しにくい場合でも、譲渡代金を実質ゼロ円とする代わりに、買い手企業に金融機関からの借入金(負債)を引き継いでもらう「0円譲渡」という選択肢が存在します。これにより、経営者個人の連帯保証が解除される可能性があり、実質的な負担からの解放を目指す経営者にとって有効な出口戦略となるケースがあります。

属人化の解消と「自走組織」の構築

規模の大小を問わず、買い手が懸念するのは「現在の経営者が現場を離れた途端に業務が回らなくなるリスク」です。M&Aを進めるにあたっては、経営者自身が送迎や管理者業務を兼務する状態から脱却し、キーマンとなるスタッフを中心に日常のオペレーションが回る「自走組織」への移行を進めておくことが、譲受側からの評価を確保する条件となります。

デイサービス事業を高く売却するための具体的な評価ポイント

デイサービスを高値で売却するためには、買い手から「将来の収益性が高い(リスクが低い)」と評価される必要があります。具体的には以下のポイントが重視されます。

安定した稼働率(85%以上)と地域連携

定員に対する利用率が安定して高い(目安として85%以上)ことは、地域需要の高さの証明になります。また、特定のケアマネジャーに依存せず、複数の居宅介護支援事業所からバランス良く紹介を受けている状態は、買収後の利用者減少リスクが低いと高く評価されます。

各種加算の取得と要介護度のバランス

単なる利用者数だけでなく、収益性の高い加算を取得できているかが鍵となります。専任の理学療法士等を配置する「個別機能訓練加算」や「入浴介助加算」、専門性の高い人員配置を証明する「特定事業所加算」などを網羅的に取得している事業所は、売却価格に大きなプレミアムがつきます。

管理者の定着と介護DX(LIFE連携)の推進

現場を熟知した管理者が譲渡後も継続して勤務してくれる場合、買い手は自社から人員を派遣するコストを省けるため、評価額が上がります。また、タブレットによる記録入力や「科学的介護情報システム(LIFE)」へのデータ連携など、介護DXが進んでいる事業所は、事務負担が少なく将来の成長性が高いと見なされます。

デイサービス特有のM&Aリスクと注意点

デイサービスのM&Aでは、一般的な企業買収とは異なる法的・実務的リスクが存在します。これらをクリアにしておくことがM&A成功の絶対条件です。

「人員配置基準割れ」による介護報酬の返還リスク

デイサービス運営で最も致命的なのが人員配置基準の違反です。例えば、祝日や夏季休暇中の「常勤換算」の計算ミスにより、基準を下回っていた期間が後から発覚した場合、過去に遡って数千万円規模の介護報酬の返還を命じられる恐れがあります。買い手のデューデリジェンス(買収監査)では、過去3年分のタイムカードと勤務表が厳しく精査されます。

「処遇改善加算」の引継ぎと分配トラブル

2024年度に一本化された処遇改善加算は、分配ルールが買い手企業の給与規定と合致しない場合、「実質的な手取りが減った」と感じたスタッフの一斉離職を招くリスクがあります。M&Aの際は、従業員への不利益変更が起きないよう、分配方法を慎重にすり合わせる必要があります。

行政の「総量規制」による指定更新の壁

地域密着型通所介護などの場合、自治体の「介護保険事業計画」に基づく総量規制(新規参入制限)が敷かれていることがあります。後述する「事業譲渡」スキームを用いる場合、実質的に「新規指定」の扱いとなるため、行政との事前協議が難航するケースがあります。

デイサービスM&Aの具体的なスケジュールと手続きの流れ

M&Aの検討開始から成約(クロージング)に至るまでは、一般的に半年から1年程度の期間を要します。スムーズな引き継ぎを行うためには、各ステップにおける入念な準備が求められます。

1. 専門機関への相談と自社情報の整理

まずはM&A仲介会社などの専門家に相談し、自社の財務状況や人員配置の状況を整理します。この段階で、売却の最大の目的(従業員の雇用維持、負債の解消、リタイアなど)や希望条件の優先順位を明確にしておくことがミスマッチを防ぐポイントです。

2. 買い手候補の選定とトップ面談

匿名性を保ちながら買い手候補に打診を行い、関心を示した企業と秘密保持契約を結んだ上で詳細を開示します。双方の経営者同士で面談(トップ面談)を実施し、理念や運営方針のすり合わせを行い、方向性が合致すれば「基本合意書」を締結します。

3. デューデリジェンス(買収監査)への対応

基本合意後、買い手企業が公認会計士や弁護士などの専門家チームを交えて、対象事業のリスクを詳細に調査するデューデリジェンスが実施されます。

4. 最終契約の締結と事業の引き継ぎ

調査結果を踏まえて最終的な条件交渉を行い、譲渡契約を締結します。契約締結後、従業員や利用者に対して適切なタイミングで告知を行い、計画的に経営統合を進めていきます。

デューデリジェンスで買い手がシビアに評価するポイント

デイサービスのデューデリジェンスにおいて、買い手は単なる財務状況だけでなく、コンプライアンス体制を多角的に調査します。

デイサービスM&Aの売却相場(バリュエーション)とスキーム

デイサービスの売却価格相場(EBITDA倍率)

デイサービスの売却価格は、一般的に「時価純資産 + 営業利益の数年分」で算出されます。2026年現在の中小規模のデイサービスにおいては、実質的な営業利益(EBITDA)の「2年〜3年分」が営業権(のれん代)の相場となっています。経営状態が極めて良好な場合は、最大で5年分のプレミアムがつくこともあります。

「法人譲渡」と「事業譲渡」の違い(指定の引継ぎ)

デイサービスのM&A手法には、大きく分けて「法人譲渡(株式・出資持分譲渡)」と「事業譲渡」の2つがあり、介護保険法上の「指定(許認可)」の扱いが大きく異なります。

デイサービスM&Aを成功させるための重要なポイント

M&A専門家の活用

デイサービス事業のM&Aを成功させるための第一歩は、介護業界に詳しいM&Aの専門家への相談です。

M&Aを進めていく前段階では、煩雑な資料作成や専門的な譲渡スキームの策定など、膨大な準備が必要となります。売却活動を始めた後も、買い手によるデューデリジェンスへの対応や、介護業界特有の規制(指定の引継ぎ等)を踏まえた契約交渉など、高度な専門知識が求められます。本業で多忙な中、専門家のサポートを受けながら無駄のないプロセスを踏んでいきましょう。

経営理念や企業文化の調整

デイサービスは「人と人との関わり」で成り立つ事業であり、事業所特有の企業文化が従業員のモチベーションや利用者の居心地の良さに直結しています。売却に際しては、それまで事業所と地域の方々が育ててきた固有の企業文化を尊重するよう、買収側にしっかりと伝え、従業員が安心して働き続けられる環境づくり(PMI)を意識することが大切です。

まとめと今後のデイサービスM&Aの展望

デイサービス業界におけるM&Aの将来性

今後も高齢化が進むことは確実ですが、デイサービス市場は単なる「数」の拡大期から、「質」が問われる成熟期・再編期へと移行しています。2024年の介護報酬改定によるコンプライアンスの厳格化や人手不足を背景に、リソースの乏しい中小事業者が大手資本の傘下に入る(M&Aを行う)動きは、今後さらに加速していくでしょう。

売却を検討する経営者が意識すべきこと

デイサービスの売却を検討する際は、日々の人員配置基準の遵守や、加算の適切な取得・分配といった「コンプライアンスと運営の質」が、そのままM&Aにおける企業価値(売却価格)に直結することを意識してください。早めに専門家に相談し、事業の「磨き上げ」を行っておくことが、ハッピーリタイアと地域医療インフラの存続を両立させる最大のカギとなります。