歯科クリニックの市場動向や、歯科クリニック・歯科医院のM&A(売却)についてまとめました。
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現在、全国の歯科医院数はコンビニエンスストアよりも多い状況が続いており、患者の獲得競争が起きています。さらに、歯科衛生士の求人倍率が高止まりしており、ゼロからスタッフを採用して新規開業するハードルが上昇しています。
そのため、収益性だけでなく「有資格者が定着している既存医院」を譲り受けるニーズが高まっています。
買い手の傾向も変化しています。広域医療法人やDSO(歯科サービス組織)は、医薬品・材料の共同購入やバックオフィス業務の集約など、スケールメリットを目的に買収を進める傾向にあります。
また、独立希望の勤務医にとっても、新規開業に伴う高額な設備投資リスクを避け、開業当初から一定の患者数と地域での認知度を確保できる「第三者承継」が有力な選択肢となっています。
歯科医療法人が、投資ファンドへのM&Aを通じてさらなる成長と経営者の生活改善を実現した事例です。一般歯科やインプラントを手掛け、5院以上を展開し、スタッフ数70~90名、年間売上約10億円を誇る地域トップクラスの規模でした。
40代前半の理事長は、経営責任の軽減や役員報酬の税率問題を背景にM&Aを決断。出資持分譲渡と吸収合併を組み合わせたスキームにより、法人売却に成功しました。
M&A後、理事長は週4日勤務へ変更し、長期休暇や家族旅行を楽しむなどワークライフバランスが改善。また、買手ファンドの新規医院展開を支援するなど、新たな挑戦にも取り組んでいます。
参照:日本歯科医療投資株式会社公式HP(https://nihon-dental-investment.com/info/ma%e3%81%a7%e6%ad%af%e7%a7%91%e5%8c%bb%e9%99%a2%e3%81%ae%e5%a3%b2%e5%8d%b4%e3%81%ab%e6%88%90%e5%8a%9f%e3%81%97%e3%81%9f%e4%ba%8b%e4%be%8b/)
千葉県の歯科クリニックを長年経営していたJ先生は、東京での勤務に集中するためクリニックの譲渡を決意。買手は都内でクリニックを経営するO先生で、より広い場所での展開を模索していました。
患者の不安を最小限に抑えるため、J先生が週1回勤務を継続する契約を締結。患者は安心して通院を続けることができ、O先生にとっても経営が軌道に乗るまでのサポートとなりました。O先生はJ先生が対応していなかったインプラント治療を導入し、広告展開も実施。M&A後、クリニックは順調に経営を続け、売上も増加しています。
参照:院継公式HP(https://www.intsugu.com/%E6%AD%AF%E7%A7%91%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E5%A3%B2%E5%8D%B4%E4%BA%8B%E4%BE%8B-%E5%A3%B2%E5%8D%B4%E5%BE%8C%E3%81%AB%E7%B6%99%E7%B6%9A%E5%8B%A4%E5%8B%99%E3%81%97%E3%81%9F/)
M先生は、父親が経営する本院の分院を管理していました。父親の他界をきっかけに分院の閉鎖を検討します。しかし、地域医療への貢献を考え、譲渡を選択することに。一方、買い手のO先生は小規模クリニックの開業を希望していました。
分院のスタッフは本院に引き上げられており、患者さんには閉院すると知らせている状況だったため、スピーディに譲渡と工事を進行。閉院を回避できました。一度は閉院のアナウンスがあったにも関わらず、多くの患者さんが再び通院するようになり、経営も安定しています。
参照:院継公式HP(https://www.intsugu.com/%e6%ad%af%e7%a7%91%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%8b%e3%83%83%e3%82%af%e3%81%ae%e5%a3%b2%e5%8d%b4%e4%ba%8b%e4%be%8b-%e8%a6%aa%e6%97%8f%e3%81%ae%e7%b5%8c%e5%96%b6%e3%81%99%e3%82%8b%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%8b/)
歯科クリニックの譲渡価額は、一般的に「時価純資産価格(医療機器や内装などの時価評価)」に「営業権(実質利益の数年分)」を加算して算出されます。
営業利益の倍率は立地やスタッフの定着状況により変動しますが、2〜5年分程度が目安とされています。
歯科特有の指標として、以下の点が評価に影響する傾向があります。
歯科クリニックの売り手側にはさまざまなメリットがあります。
M&Aであれば廃業せずに、歯科クリニックの技術やノウハウなどを引き継ぐこともできます。親族承継と違い、複数の歯科医師の候補者の中かから、選べるのもポイントです。長年の悩みであった後継者問題も、M&Aによって解決を図ることができます。
M&Aでは歯科クリニックが所有する資産を売り渡すことになるため、土地や建物、医療設備、株式などの資産や営業権などに対しての売却益を得ることができます。M&A仲介会社を挟んでいる場合は手数料や報酬等が取られるものの、手元に収益が残る方が多い傾向にあります。
歯科クリニックの院長は、現場での治療とクリニックの経営を兼務していることがほとんどです。歯科クリニックの業務量によっては、医業に集中できないことが課題となっているケースも少なくありません。
M&Aはその課題解決にも有効で、買い手に経営権を引き継ぐことにより、経営業務から解放され、医業に集中する体制を作りやすくなります。
歯科クリニックのM&Aでは、スタッフの雇用を維持することも可能です。譲渡の条件にスタッフの雇用継続を設定し、条件に合う買い手が見つかれば、スタッフごと引き継ぐことができます。買い手にとっても、新たに人材を探す手間が省けるので、双方にとってメリットとなるケースも少なくありません。
地域に数少ない歯科クリニックの場合、閉院してしまうと通院していた患者や周辺住民に影響を与えてしまいます。M&Aでは、歯科クリニックを医業譲渡して存続させることができるので、このような影響を軽減できます。M&Aで医業承継することは、地域医療の貢献にも繋がる要素となります。
M&Aは、買い手候補を探すところから始まり、双方の条件の調整や交渉、基本合意した後のデューデリジェンスなど、最終合意に至るまで様々なステップを踏まなくてはいけません。そのため、承継のタイミングを自分で選べないことがデメリットとなります。
M&A仲介会社が持っている案件数や医療業界に特化しているかなどによっても、成立時期は変わってくると想定されます。
歯科のM&Aでは、売却後も旧院長が1〜3年程度、顧問や非常勤として診療を継続する期間(ロックアップ期間)を設けることが一般的です。これは、急激な院長交代による患者離れやスタッフの不安を抑えるためのリスク対策であり、完全に現場を離れるまでに一定の期間を要する点に留意が必要です。
院長個人の人徳や技術のみで集患している場合、交代後に患者が離れてしまうリスクを警戒されることがあります。また、設備の老朽化が進んでいる場合は、買収後に高額な設備更新費用が必要となるため、譲渡価格から差し引かれる要因となります。
歯科医療において、過去の治療履歴やデータは重要な情報資産です。個人情報保護法および医療法に基づき、事業承継に伴うカルテの引き継ぎは原則として患者の同意を得ずに行うことが可能ですが、引き継ぎ後の利用目的は診療目的に限定されます。電子カルテ化が進んでいると、データ移行がスムーズに行え、買い手からの評価に繋がりやすくなります。
後継者がいない場合、「自分の代で閉院すればよい」と考えるケースもありますが、歯科クリニックの廃業には多額の費用が発生する場合があります。
一般的な事務所の退去とは異なり、歯科特有の医療機器の処分や、水回り・床下の配管が関わるスケルトン解体工事が必要となるため、数百万円から規模によっては一千万円を超える支出となることも少なくありません。
一方で、第三者へ事業を引き継ぐM&A(居抜き譲渡など)を選択した場合、こうした原状回復や機器処分のコストを抑えられるだけでなく、譲渡対価として手元に資金を残せる可能性があります。財務的な負担を軽減する手段としても、M&Aは有効な選択肢となります。
歯科クリニックのM&A手続きを円滑に進めるためには、準備から事業の引き継ぎまで、一般的な流れを把握しておくことが重要です。通常、検討開始から引き継ぎ完了まで半年から1年程度の期間を要します。
M&Aの目的(リタイア、経営負担の軽減など)を明確にし、仲介会社などの専門家と秘密保持契約を結んだ上で、自院の強みや財務状況を整理します。その後、条件に合う買い手候補と面談(トップ面談)を行い、双方が合意すれば「基本合意書」を締結します。
買い手側が専門家(公認会計士や弁護士など)を起用し、クリニックの財務・法務・労務に関する詳細な調査を行います。歯科特有のチェック項目として、未払い残業代の有無、カルテ記載の妥当性、賃貸物件の場合はオーナーの意向などが確認されます。
調査結果を踏まえて最終的な条件交渉を行い、譲渡契約書を締結します。その後、行政手続きやスタッフ・患者への説明を行い、新体制への移行(統合プロセス)を進めます。
個人の歯科クリニックを事業譲渡する場合、行政手続き上は「旧クリニックの廃止」と「新クリニックの新規開設」という手順を踏むことになります。
通常、新規の保険医療機関指定申請から実際の指定日までは1ヶ月程度の期間を要し、その間は「保険診療ができない期間」となるリスクがあります。これを回避し、切れ目なく保険診療を引き継ぐための制度が地方厚生局への「遡及指定(遡及申請)」です。
遡及指定を受けるためには、「医院名を変更しない」「新旧院長間で十分な引き継ぎが行われている」などの要件を満たした上で、承継予定日の数ヶ月前から保健所や地方厚生局と事前相談を進めておく必要があります。
M&Aにおいて、歯科衛生士や受付スタッフの離職は、事業継続における大きなリスクとなります。突然の発表による混乱を防ぐため、情報は段階的に開示することが求められます。
当WEBメディア「URUCLINIC(ウルクリ)」で歯科クリニックのM&Aの実績・事例を掲載している仲介会社をご紹介します(2023年12月4日調査時点)。
画像引用元:名南M&A公式HP
画像引用元:エムスリー公式HP
画像引用元:日本M&Aセンター公式HP