分娩件数の減少や医師の高齢化、後継者不在など、産婦人科クリニックが抱える課題は年々複雑になっています。
本記事では、同じ悩みを抱えながらも円満な承継を実現した産婦人科クリニックの事例を掲載。承継の流れや注意点なども詳しく解説しています。
診療体制の維持に不安を感じ、「この先どう運営していくべきか」と悩んでいる方は参考情報としてご活用ください。
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1991年2月に東京・日本橋で開業して以来、地域医療を支えてきた産婦人科クリニックの事例です。
院長は年齢を重ねる中で、患者数やレセプト枚数の減少を実感し、「閉院か承継か」という選択を現実的に考えるように。閉院した場合は、医療機器の処分や患者への説明、長年勤めてきたスタッフの雇用など多くの課題が発生します。
負担と影響を考慮し、より良い形で引き継ぐ方法として医院承継を選択しました。
M&Aの知識が全くない中で進めることになるため、会社選びでは「信頼できるかどうか」を最重要視しました。
当初は大手と中小の2社で迷っていましたが、知人からの「大手だから良いとは限らない。誠実であれば中小でも問題ない」というアドバイスが後押しに。
最終的には、着手金の負担を抑えられ、オフィスの場所がクリニックから近くて相談しやすいメディカルプラスを選択しました。
承継後も、スタッフは全員良い条件で雇用継続となりました。患者に対しても、これまでのカルテ情報をもとに一貫した診療ができる体制が維持されています。
また、院長には「約6か月間・週2回の勤務で診療を継続してほしい」という承継先からのオファーがありました。久しぶりに受診する患者に対しても直接状況を説明できる環境が整い、患者側の不安を最小限に抑えられています。
10床のベッドを備え、分娩にも対応してきた産婦人科診療所の事例です。開院は約55年前で、院長は25年前に父から医院を引き継いだ2代目でした。
「お産なら渡邊クリニック」と地域で認知されるほど患者に恵まれていた一方で、院長自身が60代後半となり、産婦人科特有のハードな勤務に体力的な限界を感じるように。
親族に後継ぎとなる医師もおらず、「この先も地域に産婦人科を残したい」という思いから、第三者への承継を決意しました。
当初買い手探しを依頼したのは、知人に紹介されたM&A会社です。譲り受け希望の医師は見つかったものの、成約まで進められない状況が続いていました。
理由は、有床診療所特有の行政手続きやスキーム構築に十分なノウハウが無かったためです。「病床の開設許可」も必要で、地域の病床数や行政判断によっては許可が下りないリスクもありました。
病床許可が得られない場合、分娩非対応の産婦人科となってしまい、「安心してお産ができる医療機関を地域に残したい」という前提が崩れてしまいます。そこで、医業承継専門会社のエムステージへ相談を持ち込みました。
地域事情に詳しい行政書士や税理士、不動産業者とチームを組み、病床許可を継続しながら、課税リスクを抑えて承継する手法を提案。病床許可や課税面のリスクを抑えつつ、クリニックをそのままの形で残せる方法を構築しました。
その結果、院長は「地域に産婦人科を残したい」という願いを叶えつつ、心残りのないリタイアを実現しています。
売却時には、分娩や入院機能をどのように引き継ぐかが重要なポイントになります。分娩対応には、産科医・助産師・看護師の人員配置だけでなく、夜間・休日の当直体制や緊急対応のルール整備が不可欠です。
買い手側が体制を維持できない場合、分娩停止に至る可能性もあり、地域の妊産婦に大きな影響を与えてしまいます。必ず譲渡前の段階で「分娩機能を維持する方法」と「買い手が引き継げる範囲」を具体的にすり合わせましょう。
医療承継では、電子・紙カルテの移行ルール、保存期間、アクセス権限などを事前に整理しておくことが欠かせません。
特に妊婦健診の経過や母子手帳の情報は、妊娠中のトラブル把握や分娩時の判断に直結するもの。データが欠けたり閲覧できない期間が生じたりすると、母子の安全リスクに関わります。
妊婦健診補助券の処理や自治体との連携方法も地域によって異なるため、承継前に自治体ルールを確認し、譲渡後の運用がスムーズになるよう調整しておきましょう。
看護師・助産師・受付スタッフの継続雇用は、産婦人科の承継成功を左右する大きな要素です。
分娩対応や外来運営はベテランスタッフの経験に支えられている部分が多く、スタッフが入れ替わると診療の質や患者の安心感にも影響します。
承継前に「維持できる雇用条件」や「待遇に変化がある場合の説明方法」を明確にし、スタッフの不安を最小限に抑えることが重要です。スタッフが継続して働ける環境を整えるほど、承継後の患者離れを防ぎやすくなります。
診療報酬の算定ルールや産科医療補償制度(分娩時の補償制度)の承継も重要な論点です。承継のタイミングで手続きの重複や漏れが発生すると、診療報酬の請求ができない、補償制度に未加入の期間が発生するなどのリスクがあります。
制度の仕組みを正しく理解したうえで、「いつ」「どの書類を」「誰が」届け出るのか事前にすり合わせしておきましょう。
厚生労働省によると、2024年度の日本の出生数は68万6,061人と前年度から4万件以上減少※1しており、今後も分娩件数の減少が続く見通しです。分娩数の縮小は経営の不安定化につながるため、買い手側の医療法人も分娩体制の承継には慎重になる傾向があります。
さらに、産婦人科医師(診療所勤務者)の平均年齢は59.9歳※2と高めです。今後さらなる高齢化が進めば、分娩体制の維持が難しくなり、売却・承継を希望する院長が増えると予測されます。
産婦人科クリニックのM&Aは、売り手が多く買い手が少ない競争の激しい市場です。売却が難しい領域のため、良い条件で承継先を確保するには、早めに専門家へ相談して選択肢を広げておきましょう。
当メディアでは「クリニック」「中核病院・地域医療法人」「医療グループ」といったクリニックや病院の規模別に、おすすめのM&A仲介会社を特集しています。
各規模でM&Aによる課題や重視すべきポイントが異なりますので、ぜひ参考にしてください。
基本的に院長ひとり体制で診療を続けるケースが多く、複数の産婦人科医で運営される病院・診療所は限られています。そのため、院長が若い医師を採用し、後継者を長期的に育てる体制をつくりにくいのが実情です。
いざ承継を考える頃には、任せられる人が身近にいないという状況に直面しやすくなります。
陣痛は患者のタイミングで始まり、呼び出しのタイミングや分娩時間などは予測不能です。深夜や明け方の対応も珍しくなく、当直がいない場合には院長がすべて対応することもあります。
さらに、周産期医療はリスクが高く、トラブルへの精神的なプレッシャーも避けられません。
分娩対応には医師・助産師・看護師の配置が欠かせません。個人クリニックでは十分な人員を確保し続けるのが難しいという課題があります。
医療法人グループに承継すれば、必要な人材確保や夜間体制の維持など、運営を支えるサポートを受けることが可能です。
画像引用元:名南M&A公式HP
画像引用元:エムスリー公式HP
画像引用元:日本M&Aセンター公式HP